2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

うしろ

突然消えて無くなれたら、そんな願いは叶わないことを知っている、だけど、もうどこにも行けないのだとしたら。思い通りに動かない体も頭もぜんぶ朽ちて床に横たわっている、窓から覗く宅配屋と目が合う。となりの木造アパートから鶏を絞め続けているような…

言葉にない

真夜中、海。薄布に透かしてみたような月。見慣れた配置の星。足の裏につく荒い砂と濡れた足くび、夜の風に湿った膝。浅瀬の白い鳥居、投げられた小石。寄せる波も返す波も離れずばらばらにならない。ここにいる間だけは、それがゆるされている。波は、波の…

生まれる

ほんのすこし体を放ったらかしているうちに、また空気はゆるんで、流れて、交じって、細胞が隅々まで入れ替わっていた。足を出せば青い草を踏み、見上げればめいっぱい彩度をあげた新芽に当たる。鳥はかわるがわる囀り、虫をついばみ、巣をつくる。窓の外の…

どこにも

体が冷えて動かない。また黒い影が大きくなっている。ひた、ひた、熱くも冷たくもない水が額に落ちている、ずっと同じところに、穴があいても血はでない、骨もなくて、何もない。じゃあこの音はどこに響いているんだろうね。目をあけて目をとじる。日が上っ…

光あるうち

生長期の植物が光に伸びるように、わたしたちはただ明るい方へ向かって、思い悩むことなく感じるがままに、思いっきり生きるべきときがある、ような気がする。

それがただの脳の容れものだという前に、よくよく見てみてほしい。それこそ、心の多くの部分だということがわかる。そして、体は触れ合うためにある。

あめあめ

あめあめあめ、冷たい、雨、鼻先、摂氏5度の、風、涙、泣いているのじゃない、ただの涙。死ぬほど息を吐く、マンガみたいな吹き出しができた、やった、でも、ブランク、そこは、言葉がない。しゃべらないよう。飛ばされていく風船みたいにわたしを見下ろし役…

Nui.

革のソファに寝そべるようにしてKINFORKの手触りをたしかめるのが日課になっている。気軽な朝のあいさつが高い天井に柔らかく響く。剥き出しの配管、船の帆を模したシーリングファン。コンクリートの床、窓ぎわのミルクブッシュ。バケツみたいなジョッキでビ…

タナカ

タナカは男。身長183センチ。背の高い人の多くがそうであるように、ちょっと猫背。ジャケットにTシャツっていうスタイルも、どんなイメージにも偏らず着こなす。着痩せして見えるけれど、自然な美しい筋肉がついている。トレーニングはたぶん週に1回か2回。…

視界の透明

眩しい。レンズに雨粒がついたみたいに視界の左上が歪んだと思ったら、ピカピカの三角が輪になって回りだす。子どもが描いた色とりどりのサメの歯が視界を捕食する。電飾がサーカスみたいな音楽をひき連れてやってくる。チカチカ、くるくる、拡がって、世界…