Nui.

革のソファに寝そべるようにしてKINFORKの手触りをたしかめるのが日課になっている。気軽な朝のあいさつが高い天井に柔らかく響く。剥き出しの配管、船の帆を模したシーリングファン。コンクリートの床、窓ぎわのミルクブッシュ。バケツみたいなジョッキでビールを飲む外国人たち。スナフキンみたいな女店員の淹れるおいしいコーヒー。木を横たわらせただけのカウンター、レモンが入っている水。ギター、グランドピアノ、多言語が入り交じった人の声。来る、去る、滞る。そこに流れる血。血と地のにおい。霞んだ空気が浮かび上がらせる。見えなかったものを、そしてまた見えなくなるものを。急に日が翳って光は黄色味を帯びる。平坦になった視界を蟻の行列が横切るようにのろのろと言葉になっていく、言葉にしたところでなんの意味も保たない、蜜に誘きよせられただけの愚かな思考。きっと雨はすぐに降りだして、すべてを洗い流すことになるんだろう。