2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

○ 蜂蜜に蛙がおよぐ

喘ぎながらひりひりと熱く湿った皮膚を自由にする。琥珀色の粒々がぺたぺたと額を濡らすままにみあげると星雲が配列された真暗闇がひろがっていた。気に入りの星雲よりもその闇に気をとられたので目をかたく閉じてから窓という窓を開けて風が吹くのをまった…

○ 鱗茎

彼岸花の根を擂り潰して足のうらにぬりたくっていたよね。お蔭さまで歩くのに難儀しなくなったんだとか。土手に突き刺さっているその花は、新鮮な血痕みたいにわざとらしく朱く群れたり散ったりしていたのに今日にはもう褪せて、空はあまりに澄み青いので、…

○ どこへでも

疲弊が母を眠らせた隙に昏睡して動けない父の手をとって自分の頭にのせてみた。のせて二回撫でてみた。もう短い息継ぎのような呼吸だけが、居心地良いでしょうと言わんばかりにしているホスピスのあたたかそうな色のくだらない壁に弱々しく響いている。だん…