「背徳感でしょう」継ぐ息に圧されこぼれる言葉を憎んだ、吐きすてる前のガムみたいなその言葉を、だから肚の底から憎めたんだ。そして、0.1秒後に愛した。「愛したっていうのは、どうでもよくなったのと似ているよ」


腹の上で見上げた小さな海には濃い密度の闇がぼやぼやと寄せて返している。視力を失った気がして怖くなったわたしは小さく声をあげて溺れるふりをしてそれから浮き輪みたいな言葉をちょうだいと言うと、愛してなんかやらない、と口の端を完ぺきなやりかたで曲げた。「予定調和は、あなた、思考の外を見ようとしないから」


そしてひとつ、ひとつ、悪の種を蒔く。罪悪感のために生まれて死んでいくようなわたしたちの、あの目を見た?どうせ愛のまま死んで生まれるわたしたちの、あの目よ。「罪悪感に罪悪感!エゴが安心している、これでつかのま誰かの正義に陶酔できるものな」わたしたちは綻んだ互いの輪郭をなぞって、これは理想的な理想だとよろこびさえした。


種は芽ぶくし花はさそう。


「悪に悪意はないよ」