2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

冬の蜂

目がさめると夕方の匂いがしたから庭にでた。割れそうな頭は一瞬だけ遠ざかってここにある。冬の蜂が地面を這って、もうどこにもいけない速度で自分の命を追い越していくところだった。冬になれば終わるようなものを羨んですこし泣く。ふと、あのひとの感触…

視線

震えがとまらないから赤いタータンチェックのシャツを着てチルデンセーターを重ねた。ずり落ちそうなチノパンは男の子みたいなベルトでとめてFILMELANGEの白い靴下を履く。CHURCH'Sのサイドゴア、紺のトレンチコートと大きなリュック、Drake’sのマフラー、オ…

時間

時間が進まなくなったということばかりがぼんやり浮かんで沈んで、頭の芯は古いゴムのようにひびわれていて船酔い。昨日があって今日になって、もう12月、ひとりで、ふたりで、だれもいなくても朝、夜も、明け方のにおいとか、霜のおりた草の、とける光が映…

標本

アゲハ蝶の標本を赤茶色い玄関の床に手をつき見あげている。覚えている最初の映像。薄黄色と埃っぽい黒がはりついて動かないままただそこにあるといえない威圧的な何か、秘密がある、隠しごとが、見てはいけないよ。小さかった鼻からひとつ息を吐いてけいた…