時間

時間が進まなくなったということばかりがぼんやり浮かんで沈んで、頭の芯は古いゴムのようにひびわれていて船酔い。昨日があって今日になって、もう12月、ひとりで、ふたりで、だれもいなくても朝、夜も、明け方のにおいとか、霜のおりた草の、とける光が映す静けさ、おと、染みついたうた声、かさかさの指先とか、経過をしめしているのに出来事の辻褄をあわせて記憶をつないでいくことをしないと時間はとまりがちになるようで、だけど、もうすっかりばらばらの、モミの木の飾りみたいに明滅する起きたはずの事の因果関係を整えるのはあきらめた。切れたおへそは引き攣って、いるけどそれがなんだ。部屋のなかに吹く風がとても冷たくて泣くほどきもちよくて鼻先だけ毛布につっこんで眠ろうと思ったのだけれど、実際の鼻先はそんなに長くなかったから絆創膏でほぐした綿球をはりつけた。隣にいる犬の鼻先は毛布につっこんだ。19歳の男の子は総じてシャンプーにケチャップを混ぜたにおいがする。このヨーダみたいな神々しい赤ん坊もそんなふうになるのだろうかと思うとちょっと辟易した。