2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

雪の日、二日目

夜明け前の薄暗さのまま一日が終わった。こんなにうるさい雪の日は初めて。外を歩く半分の人はすべって転んできいきいさけび、つもるはずの雪の半分はごうごうと強すぎる風に飛ばされた。大きな雪だるまをまっしろにつくるにはたりないけれど、雪はつもった…

雪の日

今日は氷点下の気温が一日中つづき、雪の降らない時間はなかった。路面はかたく薄い膜に覆われどこか安心しているようすで、そのうえを風に追われすべる雪。音もなく、というよりもわたしに音はよりつかず、なにもかもがどこか遠く、意識の縁にみえ隠れする…

ノーザンライツ

チープなチュール、でもオートクチュールでもオーロラのようにたっぷり濃く重なり、それでいて、重なるほどきりなく淡く透けなくては。ここは余りの世界。なにもかもが打ち消しあったあとの残り滓の世界。わたしたちはいつも、だからきっと孤独。波立つ襞は…

手のうちをぜんぶみせる約束をして恐怖を交換する。痛くもかゆくもない傷口を晒すのをゆるさない。新鮮に苦くひっそりと深い場所を探りあてやさしい声で甘やかさない。痛いっていえばいい。苦しいっていえばいい。穏やかなふりの鈍磨した感情をひきちぎって…

ひつぎ

墓をひつぎに入れるような愛し方をしたの。せめては殺して山手線へ捨ててと言って雪を食む。もうおやすみよ。どうせね、どこへも運ばれない。

しるし

ひつぎにはおもいもよらないものがはいるだろう。冬はほんとうに来てしまったから、けさより風はひどく強く、雪はおりたりのぼったり。白、突然にあらわれる白い雪の白さはいつも、小さな孤独に満ちている。耳は遠くへ、肌は世界を吸いとって、ちくりとくち…

サンタアナ

サンタアナの生ぬるい風が恋しい。冷蔵庫の上だけ掃除するミサキちゃんと住んでいたワンベッドルームのサウスサイドテラス。白く塗られた木製のドア、洗濯室のにおいや日のあたる庭、英語も通じないヒスパニックの隣人たち。日向ぼっこをしながら芝生の上で…

明日

眠れずにずっと起きている。薄青い朝と乾いた昼と暖かな夜と。ひましに嵩をます水のような恐れは体のあちこちからこぼれてベッドを底なしの沼に変える。離れていった言葉は実体化して、この体よりもはっきりと重く、疎く、不透明にかたく、狂った花みたいに…