しるし

ひつぎにはおもいもよらないものがはいるだろう。冬はほんとうに来てしまったから、けさより風はひどく強く、雪はおりたりのぼったり。白、突然にあらわれる白い雪の白さはいつも、小さな孤独に満ちている。耳は遠くへ、肌は世界を吸いとって、ちくりとくちびるにばかり積もりたがる白のひとひら、ふたひら。快楽に似た痛みは韻をふみ、まっすぐに消え失せ音をとり零す。とてもよいゆきどまりをみつけたのよ、そこへつれていってあげたいな。手は小さく震えて、手という手をとり展開する命。生まれたばかりの体、うんとのびをしすぎて飛び散った、それから雪になったとおもう。あるときは星に。ふと黒い空に黒い雲は立ちこめる、あなたの黒い目はみつめる黒いわたしの星。星たちよ。やわらかに死んでしまいなさいゆるしてあげる。100万年前に生まれた光の9分前の残像を、最期の目には焼きつける。あなたの体に触れた、そのしるしとして。