手のうちをぜんぶみせる約束をして恐怖を交換する。痛くもかゆくもない傷口を晒すのをゆるさない。新鮮に苦くひっそりと深い場所を探りあてやさしい声で甘やかさない。痛いっていえばいい。苦しいっていえばいい。穏やかなふりの鈍磨した感情をひきちぎってだれかの影になるのをゆるさない。泣けよ。臆病さのためになくしていくものには臆病さをふくまない。綻びから滴る理想思想に煽られ追いやったひとひとひと。ひとりきりのふりして人じゃないものにあやつられるのをゆるさない。なにも思いどおりにならないところをみていてあげる。ここにはだれでもないだれかしかいない。揺れて溺れてぐちゃぐちゃにして消去するのをゆるさない。自らを陥れる、あらゆることへの言いわけにする。恥を知ればいい。目をあけて終わるところをみていて。息を吐くだけで発狂しそうになる体の配置がえをおこなう。首を絞めて息の仕方を思いださせてあげる。生きればいい。ゆるしておねがい。なにもかもゆるせ。リセットしたつもりの創造するつもりの万能感みたいなものに陶酔しそこねたあとの世界はいつもと同じに終わらない。待ちのぞむ欲を燃やして灰にすればいい。そうだその灰で墓標を立てようよ。安心などするものではない。ここにはだれも、だれもいない。