どこにも

体が冷えて動かない。また黒い影が大きくなっている。ひた、ひた、熱くも冷たくもない水が額に落ちている、ずっと同じところに、穴があいても血はでない、骨もなくて、何もない。じゃあこの音はどこに響いているんだろうね。目をあけて目をとじる。日が上って日が落ちる。その繰り返しだ。世界が終わるところを想像して安堵するような世界に生きている。生きている。どこまでいっても終わらない、何も終わらない、わたしがいる限りずっと続いていく。どうして泣いているのか知らない、吐いて泣いて、意味もなく繰り返すより血を見る方がずっといい。だってほんとうになんの意味もない。胸骨を一本ずつ、魚の骨でも取るみたいに簡単に抜き去っていくこの風は、どこから吹いてくるんだろう。どこだっていいどうせこの世界のどこかだこの世界の匂いがするよ、だから、どこにも行けるわけがない。