空は二層

18時すぎの3号線を走る車の列には音がない。どこまでも続いているけれど、どこにも行けない道しかない。空は二層に分かれて遠ざかる光を反射している。雲は完璧な不透明さでつやつやと夜に迫り、恐ろしいほど世界から独立している。蛇口から出た水が排水口に吸い込まれるように、たったいま終わる世界。雲の隙間からこぼれ落ちた夕日が空に溶けだして、それが合図になった。終わって、始まらない、ただ続いていく時間のようなものの連続体を眺める。手で掴めそうなほど立体的な雲に、掴めないと知りながら手を伸ばす。それを愚かだって言うのなら、生きる意味はどこにあるのだろう。