○ 鴉の羽軸をオリーブ油に漬したもの

中央公園の枯葉をしゃくしゃく鳴らしながらなにも考えない。朝と昼と夕方と。みどりのかかった黒の鴉は鈍い艶のある羽をきれいにたたんでこちらを見ている。宝物をみつけたような気分になってぼんやりと弁当を奪われ広げた羽を見あげた。「ともぐい」褪せた芝生に鴉の目のような濃い紫色の実が散らばっている。日に日に土の色に近づいていく葉。乾燥した空気のにおい。息はまだ透明。あのひとがここにいたら冷たい鼻を頬につけて眠る。そして同じ瞬間に目を覚まして、夜が明けるころの空気だけをいっしょに吸ってまた眠るだろう。昼も夜も、それは明るいか暗いかくらいの違いで、でも、それだけのことが、本当はいちばん大切なんだろう。