● のっぺらぼう

左から右に流れるベルトコンベアのような白い装置を横から見ていた/右の方はすぐそこで滝のように足もとより低いところへおちているようでその先を見ることはできない/左を見ようとしたけれど首の後ろになにかがしがみついていてできない/1ミリでも動くと首がおちてしまうことを知っているみたいな気になったのでそっと息を吐いてとめた/様々なものが左から流れてきては通り過ぎた一瞬の後に消失する/右の方へ流れおちるより早く消えるそのいろいろのものを見るのは1秒にも満たないほどの僅かなあいだ/体験したとは到底言えない/思い出そうにもあまりにも短い---/そんなことの連続/ここにすでに未来はあっても過去はもうない/「仕上がり良い歯磨き粉を買っておいたよ■○×○*clean□★」誰かの声が通り過ぎる救急車のサイレンみたいに聞こえる/仕上がり...?/わたしたちに時間は流れていないね/時間の近くにいてその影響を受けているだけだ/なんて不安定な/状態/ああ/失うことを恐れているのは失い続けているからか/いまも/そんなことを知らん振りするために/恐怖はあるのか/本当は知っている/装飾毛布の前でわたしは泣きじゃくっている/迷路のようなホームセンターで/ももと書かれたわら半紙の前で/血の染みた真夜中の車道で/ブラインドカーテンに囲まれて/蛍光ピンクのナイロンブルゾンを着たお坊様が後ろに来ているよ/蜜柑は食べかけたけれど味がわからない/痛かった?/怖かった?/小間切れの時間が一瞬集まってすぐに散り散りになって