春の突風

それは東南東の高気圧から西南西の低気圧へ向かって吹く。静々と整列した空気を掻きまぜ弛ませ木立のにおいを立たせる。桜の木肌には密やかに上気した頬の色が滲みはじめていて、わたしはシリコン人形みたいなやりかたでそれをみつめるしかない。息はしない。また来た狂った季節。拒んでも、望んでも、叶っても、とおりすぎていくよとおりすぎていくんだよ!雲は破れてのぞく空は空。群青でも、白銀でも、橙でも、目はみつめる空。(よろこびしかつたわらないとおもうこころにぞうしょくするかなしみ)のろまな言葉に苛立ちにらむ風。髪を掻きわけスカートを翻す風。布きれほどの手応えもなく体はいつもの左端から散っていって、しまって、舞って。